市況レポートVol.339
2025.08.06
2025年7月は全国的な記録的酷暑に見舞われ、花き生産・流通に大きな影響が出ました。気温は平年を大幅に上回り、1898年の統計開始以降で最も高い7月平均気温を記録しています。この極端な高温と少雨の環境下で露地栽培の開花遅延や生育不良が相次ぎ、各産地からの花き入荷量は平年比で大きく減少しました。
一方、消費面でも猛暑の影響は深刻で、花店では日中の来客数が激減し、店頭販売の伸び悩みが報告されています。特に7月前半は猛暑により入荷量が減り、消費者の外出意欲も低下しており、市場全体で出荷・販売ともに例年夏より静かな推移となりました。
しかしながら、お盆時期(新盆含む)の需要は底堅く、仏花を中心に一定の引き合いが維持されました。とりわけ7月中旬の新盆需要期には菊類など伝統的花材の動きが見られ、市場では対応に追われる場面もありました。全般には、高温多湿による品質低下(花焼けや茎伸長不良など)が各品目で問題となり、高品位品の供給不足から一部品目では相場が強含む傾向も見られました。一方、消費者の節約志向も相まって高単価商材の動きは鈍く、全体として盛夏の花き市場は供給・需要両面で厳しい局面となりました。
リンドウ(竜胆)
高冷地産を中心とする夏秋期の主力品目ですが、今夏は出荷量が極端に少なく深刻な品薄となりました。高温による生育抑制で開花・出荷時期が例年より遅延し、岩手産など主要産地でも注文対応で手一杯の状況です。市場ではリンドウの確保が非常に困難となり、相場も終盤にかけ上昇傾向でした。
菊類、アスター
仏花需要を支える夏秋菊は引き合いが非常に強く、お盆需要期に向けて活発に取引されました。菊類やアスター(蝦夷アスター)のLMサイズは産地減少傾向の中で需要が旺盛で、店頭・業務双方から注目されています。輸入菊も含め供給量が限られるためセリ場への入荷は厳しく、お盆直前には品薄による高値も見られました。北海道産の夏秋アスター(いわゆる蝦夷アスター
洋花(バラなど)
夏場は市場の引き合いが総じて弱く低調でした。高温期にバラ類は生産面でも作型維持が難しく、周年栽培の生産者が夏季に栽培休止するケースもあるため、この時期の入荷量自体が少なくなりがちです。また猛暑により花弁焼け等の品質低下も発生し、一部品種は入手困難な状況でした。需要面でも高温下では傷みやすい洋花の敬遠傾向が強まり、価格帯の高い輸入バラなどは動きが鈍かったとみられます。
アンスリウム・ヒマワリ
暑さに強い花材は比較的安定した動きを維持しました。熱帯性のアンスリウム類は高温期でも品質保持が容易で、出荷量・単価とも堅調。夏花の代表格ヒマワリも産地リレーで潤沢に供給され、盛夏需要を支える主力として人気を保っています。これら耐暑性花材は猛暑下でも日持ちや品質への信頼が高く、ブーケやディスプレイ用途で引き合いが継続しました。
トルコギキョウ(リシアンサス)
夏場の主力切花の一つですが、今年は高温による前進開花で生育リズムが乱れました。北海道など冷涼地産が中心となるものの、猛暑の影響で茎が十分に伸びず上位等級品の割合が少ない状況です。出荷ピークも平年より早まり分散傾向となったため、高品質な大輪系は品薄で相場高め、下位等級主体の流通となりました。例年に比べボリューム感に欠けるものの、季節商材として一定の取引量は確保されています。
おすすめ花材
ノリウツギ「パンドラ」
夏から秋に咲く大輪のパニクラタ系アジサイです。白~ライムグリーンの大きな円錐形花序が特徴で、いわゆるミナヅキ(糊空木)系統の中でも存在感があります。耐暑性・耐寒性に優れ生育も旺盛で、猛暑期でもボリュームある白系花材として重宝します。夏枯れしがちな季節に涼感を演出できるお勧めの枝物です。
ルドベキア(ヘンリーアイラーズ、タカオ)
真夏~初秋のガーデンや切花に適した多年草です。いずれも暑さに極めて強く、長期間にわたり次々と花を咲かせる旺盛な開花性が魅力です。‘ヘンリーアイラーズ’は細長い筒状花弁が放射状に並ぶ個性的な品種で、夏花束のアクセントに最適です。一方、‘タカオ’は黒い中心と小ぶりの黄色花を無数につける古くから親しまれた品種で、丈夫で管理しやすく耐暑性も抜群です。どちらも猛暑期の切花として日持ちが良く、ボリューム出しや彩りにおすすめできる花材です。
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